VOLUME 2 ニューオーリンズよもやま話

ニューオリンズの町のよもやま話(パート2)

売春宿とデキシーランドジャズ

ストーリービルの花形はピアノマンだった

N.Oの話を整理している内に、ふと知りたくなったのがその当時市に届け出をしていた2,200人と言われるストーリービルの「夜の蝶々さん」のお値段についてで、それを知るにはよそ者には大変危険な地区なので”一人では絶対に行くな!”と地元の人達にきつく言われていたベイズン・ストリートに潜入しなければ知る手立ては無いと思い、朝早く友人から借りた自転車に乗って一人で「危険地区」に出向いた。

運良く道端で朝のお掃除をしていた太めの”黒人おかみさん”に出会い、話をしていたらご親切にも彼女の家に招いてくれて「あんたの知りたい事を知っているのは80歳以上の人でその時代にこの土地に住んでいた人しか分からないだろう。そうなるとあのクリフ爺さんしかいないよ!。今電話してみるから!」

お茶をごちそうになり暫くしたらその84歳のクリフお爺ちゃんが何と一人でキャデラックを運転しながら来てくれたので大感激。早速その話題に突入すると「わしはこの話をわしのお爺ちゃんから聞いたのだが」と前置きして(確かにこのクリフ爺ちゃんの生まれた年が1916年なのでそれより前の1900年頃の話となると・・・・)

「今でもそうだがストーリービル華やかなりし頃ここにはありとあらゆる人種の人々がやって来たのさ!フランス人、スペイン人、クレオール人、ニグロと言ったこの土地の人々に加え”ニューカマー”と呼ばれる所謂(いわゆる)この土地で一旗上げようとするアメリカ本土からやって来たアメリカ人、中南米からブーズー教主体の西インドニグロ人、N.Oの港に出入りする船と共にやってきた数多くのアジア人他・・・・・」

「さて、ストーリービルの売春宿では必ずと言っていい程”ジャズ”が演奏されていたのだがそれにはそれなりの訳があったんだよ!」クリフお爺ちゃんの話はどんどん続く、「ともかくありとあらゆる人種の人々がこの町に押し寄せてくる中で売春宿の客扱いといったら大変なもので”ハンパな”人間がやったのでは常に揉め事の火種となってしまうので多少気の利いたインテリで機転の効く者が当然必要になっていたのさ、」

「それに適していたのがバンドマンと言う訳で取り分け、ピアノマンがその鍵を握っていたんだそうだ。」「やって来た客は店に入ると、やや広い接客スペースがありその奥の方にかわいい”蝶々さん達”が待機、その境界の所にピアノがセッティングされていてその周りにバンドマンがいる形で、客は店に入ったらひとまず音楽を聞き心をなごませてから自分のお気に入りを見つけ出す。」

「やがてお気に入りが決まるとピアノマンに近づき、チップを渡しそのお気に入りを彼に告げる。するとピアノマンは演奏の手を休めずにそのお客とその彼女の相性や部屋等の取り決めをし最後に価格を提示して双方の商談をまとめる。


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