ジャズ史上重要な「1917年」

 この1917年(大正6年)はジャズ史上最も重要な年です。録音技術の進歩でSPレコード盤(材質はシェラック)が世に登場しそれが第二次世界大戦後の1948年8月にコロンビアが33回転のLP盤(材質は塩化ビニール)を世に出す迄の約30年もの長い間、レコードは78回転のSP盤時代が続き、この間に250以上のレーベル(レコード会社)が登場しジャズの発展に大きな貢献をしました。

デキシーランドジャズがこの輝かしいSP盤登場の幕開け役を演じ市民権を得た後で、黒人音楽家の立場は一変し時代はあの狂乱の1920年代「ローリングトゥエンティース/THE ROALING 20TH」に入りジャズブームは留まる所を知らず社会の話題の中心となる程に急成長しそれがジャズそのものと黒人演奏家の立場を好転させるのです。

あの偉大な「ジャズの王様」トランペットのルイ・アームストロングは正にこの時代の代表的黒人プレーヤーで1925年コロンビアでベッシー/スミスとの「セントルイス・ブルース」の録音は「世紀の録音」とさえ言われ当時の大きな話題となり、それ迄劣勢のコロンビア社はこの一枚のレコーディングでそれ迄優位のビクター社と並ぶ座を勝ち取る事が出来たという社会の話題になる程ジャズは急成長して行きます。

またアメリカの第一次世界大戦の参戦は兵隊と共にヨーロッパの地にジャズの火種を運び、ヨーロッパでもにわかにジャズブームが巻き起こりイギリスは早速、白人バンドの「O・D・J・B」を招き、フランスではクレオール人プレーヤーの演奏が熱狂的な支持と喝采を浴びます。こうしてジャズはヨーロッパでも市民権を得るのです。

3分間の芸術表現

現在のDVDやCD或いはLPレコードと違いSP盤レコードの録音時間には3分と言う限られた時間制約が有ったので音楽家達はそれ迄自由で無秩序だった演奏時間を僅か3分と言う時間内に己の芸術をどうやって収めるかと言う新たな挑戦が始まります。

これはジャズそのものをより簡潔にする宿命となり、人々が気軽にジャズを受け入れる大きな要因となったのです。

世の中にレコードが登場しそこにジャズが登場、やがて1922年にはピッツバーグからラジオ放送が始まり巷にジャズが溢れ、映画は無声から有声になり全てがブーム、ブームの何もかもが狂いに狂ったアメリカの「狂乱の"ローリング20TH"」時代に入ります。


前へ 目次 次へ