デキシーランドジャズの誕生とその歴史(その3)

ここ迄は南部ルイジアナ州のN.Oで起こった19世紀末迄のジャズ誕生の出来事、ここからはその続きで時代はいよいよ20世紀に入り世間に徐々に知れ渡る新しい音楽、ジャズが誕生し瞬く間に大きく成長していく1920年代初頭の姿をお話しします。

激動の20世紀の幕開け

20世紀の始まり、西暦1900年(明治33年)とはどんな年だったのでしょうか?勿論この話をしている本人も人から聞いての話ばかりですので、皆さんは常に補足してお読みください。

20世紀初頭までの世界はなんと言っても「ヨーロッパ支配」の時代でした。
ジャズ物語の中に突然歴史の史実を持ち出すのは場違いですが、この時代を少しでも良く知って頂くために多少の歴史上出来事を持ち出した方がより判り易いのでご了解ください。
1900年最初の年の世界の話題はパリで開催された”世界万国博覧会”でアールヌーボー様式のエッフェル塔が町の中心にそびえ、メトロ(地下鉄)が走り、動く歩道のエスカレーターも登場し、ファッション全ての文化はパリから世界中に発信され、誰もが憧れたパリ、誰もが疑わなかった強きヨーロッパの中心その象徴の町、パリで開催された「万博」は正に世界の中の強きヨーロッパを誇示する大きなイベントだったのです。
しかし、いつの世も同じでその万博の華やかな表顔と裏側の実社会とは大きな矛盾を抱えており、この20世紀最初の記念すべき万博を境に、ヨーロッパは自ら没する運命をたどる事となり時代は陰惨な世界戦争時代へと突入して行きます。

それまで続いてきたヨーロッパの繁栄を支えてきた、ただ身勝手な植民地奪取、略奪搾取時代の終焉、王政貴族社会の崩壊等々ともかくも天地がひっくり変える様々な出来事がヨーロッパを中心に世界各地で巻き起こり、その反動は常に最も力の弱い一般市民にのしかかり暗い貧困社会となります。こんな時の解決策はいつの時代でも変わらぬ人間の性(さが)、相手の事等お構い無しの「戦争」をする事で、1914年には遂に第一次世界大戦が勃発します。
この戦争でドイツだけでも1200万人の兵隊が動員されたと言う大戦争です。
ヨーロッパ社会の崩壊時代が始まり世界中が不安社会になって行く課程で比較的冷ややかだったアメリカも1917年の4月にこの大戦に参戦します。
この時代のヨーロッパの貧困から逃れる人々の手段として「自由の国」アメリカへの移民が大流行となり、あたかも18世紀から19世紀にかけてN.Oの町が黒人奴隷によって急激に膨れ上がるのと同じ様に全米各地にヨーロッパから大勢の移民が流入し、アメリカの人口が急激に増え始めたのも20世紀初頭の顕著な特色の一つです。
第一次世界大戦開戦2年前の1912年、イギリスの国力を誇示すべく建造された”不沈”豪華客船「タイタニック」はこの移民を当て込んだものでしたが、その処女航海で船は沈没と言う大事件はいよいよ人々の先行きに暗い影を暗示させたのです。

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